悠の詩〈第2章〉
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どの程度叫んでいたのか分からない。
途中で意識が飛んだみたいで、次に気付いた時には俺の目は厚い曇り空を捉えていて、自分が仰向けに寝かされて運ばれているって事を中々理解出来なかった。
右の肩下から指先にかけて、燃えるような痛み…
柳内大丈夫か、早く医務室へ、後は俺達に任せろ、皆が顔を歪めながら口々に言うのをぼんやり聞いて、俺はまた意識を落とした。
…再び違う景色。
今度は、白い天井と煌々と灯る蛍光灯が目に飛び込んできた。
「春海! 先生、春海が」
かあちゃんの声。スタンドの声援もぼわんとだけど聞こえる。
「大丈夫かい、起き上がれるかい」
医務室のおじいちゃん先生がベッドの縁に両手をついて、俺の顔を覗き込んできた。
「──っっっ」
少し身をよじっただけなのに激痛が走った。
声にならない声を上げて額に脂汗を滲ませる俺。
それをハラハラしながら見るかあちゃんに、先生は処置をしながら、
「筋挫傷、それから、骨折の可能性もあるから、必ず専門医に診てもらって下さい。当分プレーは無理だよ」
と言う。
「わかりました…
春海、すぐに病院行こう。
かあさんベンチに行って先生に伝えてくるから。あとタクシーも呼んでくる」
早口に言ってかあちゃんは医務室を出ていった。
先生の手を借りてやっとの思いで体を起こせて、何でこんな事になったのか、かあちゃんが戻ってくるまでに俺はゆっくり思い返した。
相手のヒットがレフトの後ろまで飛んで、ランナーは一塁を踏み二塁へ…
レフトが追いかけて捕った球をショートへ、ショートからセカンドの俺へ…
この時俺は、二塁ベースから少し離れた所で球を受け取った。
ランナーが猛スピードで駆けてくる。
俺は球を握った右手を目一杯ランナーに向けて伸ばして。
スライディングでベースを獲ろうとしたランナーのスパイクを、思いきり右腕で受け止めたんだ。
あれは、アウトに出来たんだろうか。
ボールを最後まで掴めていたのか、記憶があやふやだ…
…