悠の詩〈第2章〉
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(ダンダンダンッ、ダンダンダンッ、フレー、フレー、○○○中…)
2-1で俺達のリードのまま、9回表ツーアウトまで来た 。
あとひとり押さえられたら念願の県大会進出…だけど、アドレナリンを感じるより先に疲労が前に出た。
キャプテンがタイムを掛け、ナインをマウンドに集結させる。
「皆大丈夫か? あと少しだから、もうひと踏ん張りしよう!」
俺だけじゃなくてキャプテンも皆も、肩で息をしていた。
作戦練るフリして少しでも休もう、とキャプテンは小声で言って、口パクとジェスチャーで無い話をし始めた。
始めは真面目に聞いているフリをして、静かに呼吸を整えていた俺達。
でも、だんだん可笑しくなっちゃって…誰かが堪えきれずに「フッ」と吹き出しちゃったから、「バッカ、笑うなよ!」と最終的に全員ゲラゲラ笑ってしまった。
そんな俺達を不審がってスタンドがざわつき始める、主審も「もういいですか!?」と少々強めに注意を飛ばした。
「さあ、しまっていこーぜ!」
涙目のキャプテンがボスンとひとつミットを叩いてそう言うと、俺達はやっと散り散りになった。
この時にふっと、ピーカンだった空に雲が覆い始めて影が出来た。
涼しい風に吹かれて、疲れている体が少しだけ癒された。
天気も俺達の味方かも? なんて…
とんだ思い違いだった
「──────うあああああ……っ!!!」
数分後に響き渡った
俺の絶叫。
…