悠の詩〈第2章〉
10/80ページ
「あー、まーなー。しゃあないや、今踏ん張り時だもん」
「ベスト8だって? これまでで一番の快挙だって聞いたけど。次勝ったら県予選行けるんだっけ」
「おー…よく知ってんな??」
俺が面倒くさくていちいち結果を報告してないのに、樹深は何でか把握してる模様。
「フフフ…レギュラーになったのも知ってるよ」
「え」
「っていうか、そういうのは早く言ってよ。おめでとう」
先輩の犠牲ありきのレギュラー獲得だったからな…なんていう俺の複雑な思いを樹深は知らない。
知らなくてもいいけど。俺自身も、あんまりしんみりしてられないし。足を引っ張らないように、必死になるしかない。
「…おー。ありがとなー」
やっぱり色々話すのが面倒くさくて、樹深にはそれだけを言って、机の上で両肘を抱え込むように丸まった。
するとふと、樹深の手が伸びて俺の眉間をちょいちょいと擦った。
「…あんだよ(笑)」
「(笑) しわ寄ってる」
コレ、小さい時からの樹深の癖、かまってちゃんサイン(笑) 本人は気付いてないらしいけど。
「ねみぃんだよー、寝かしてくれよー」
樹深には悪いけど、分かってても本能には勝てない。ますます縮こまる俺を見て、樹深はふっと笑う。
…