悠の詩〈第2章〉
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ユキの話を聞いたこの日、俺達はベスト8進出を決めた。
そしてこの試合が、俺の中学野球デビュー戦となった。
終盤、3年の大野先輩がヒットを打って塁に出る際に、相手側と派手に衝突してしまって…
とても痛がって動ける状態ではなかったから、補欠の中では一番足の速い俺が代走を努めて…
それで出番は終わりと思いきや、「選手交代、ショート大野に代わり柳内」なんと守備も任されたのだ。
「落ち着いていこうぜ」「お前なら大丈夫」「大野の分まで頑張ろう」先輩達の励ましもあって、緊張でガチガチにもならず、相手のヒットを捕ってアウトにする事が出来た。
大野先輩は…肩を脱臼してしまっていた。少なくとも今夏は安静するようにとドクターストップが掛かった。
「勝ててよかった。柳内、この先は頼んだからな」
大野先輩は穏やかに言ったけど、俺の肩に乗せた手は微かに震えていた…
こうして俺は1年の誰よりも早く、2年の控えの先輩達よりも先に、スタメンの座に着いた。
こうなった以上、がむしゃらに頑張るしかねぇ。ここまで来たら、部の最高功績をもっと更新していくんだ。
次の試合まであと数日となった頃には、学校は午前授業週間になっていて、その分部活に充てる時間が増えた。
朝練も変わらずある。授業はかろうじて聞いてたけど、体力温存の為に休み時間はもっぱら伏せって寝ていた。
「はる…柳内くん、お疲れだね。練習厳しい?」
前の席の樹深が振り返って覗き込んできた。
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