悠の詩〈第2章〉
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清水…ユキの事だ。
顔を上げて振り向くと、ユキの学校の制服を着てスコアブックを抱えている男子が、俺の背中に手を伸ばしている所だった。
「はあ、そうですけど」
「よかった、間違ってなかった。遠目だったから違ってたらどうしようかと…
あの、キミは清水の友達?」
「はあ、まあ」
ぶっきらぼうに答える俺に対して嫌な顔ひとつせず、一生懸命に話し掛けてくる彼。
でもこの彼も…これでもかってくらい、容赦ない現実を俺に突きつける…
「僕、◆◆中のマネージャーです。
清水とは同じクラスで…清水は、野球部にはいません。
うちの野球部、勉強の成績も良くないと入部出来ないんです。
清水は…
本入部の前のテストで落ちました。
あんなに野球をやりたがっていたのに」
……
なに、ソレ。
つーか、ユキだって頭いいじゃん。
根性も実力もない──さっきの二人の言葉がグルグルと回る、ユキはその中に括られたってのかよ?
(柳内ー? どうしたー)
俺がついてこないのに気付いた皆が、立ち止まって遠くから呼び掛ける。
…