悠の詩〈第2章〉
4/80ページ
ユキの学校の野球部は過去に何度も県代表を勝ち取っている、市の代表枠に入るのなんて通過点に過ぎないほどの名門校。
今年のトーナメント表を見ると、俺達はブロックが全然違っていて、同じ会場で試合をする事が今の所無い。
ユキの学校と当たるのは決勝戦あるいは県大会のどこかで…まだまだ先の話、つーか俺、ベンチにも入れない応援要員だった。
ユキはどうだろう、まだ1年生だけどアイツセンス抜群だし、レギュラーは無理でもベンチには座れているかもしれない。
俺とユキは入学前のあの日以降連絡を取り合っていない。
一度だけ近況報告をしようと電話を掛けたけど、誰も出なかった。
ユキん家は共働きだし、ユキも今頃必死で練習してんだと思って、
(ご用件をお話し下さい。ピーッ。)
留守録には何も入れず、俺は電話を切った。
無事ベスト16進出が決まった時に、顧問の先生から思わぬ発表が。
次の試合から、1年生からもベンチ入りさせるというのだ。
「入部からここまで誰も辞めたりせず、上級生達の練習にもついてきて、本当に全員頑張ってきたな。
その中から特に今後の活躍に期待出来る者を指名する」
補欠の2年生2名に加え、1年生から3名が選ばれて…その中に、俺がいた。
先輩達の歓迎のタッチを肩や背中に受けながら、俺は心の中でガッツポーズをした。
…