悠の詩〈第2章〉

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 遠足の翌々週に1学期の期末テストがあって、先月の中間テストではやらなかった教科が加わって、不平タラタラだったけど俺は頑張った。

 何でかと言うと、ここで赤点を取ってしまうと、その次の週から始まる総体に参加出来なくなってしまう。応援に来るなとさえ言われている、これはどの部活も同じ。

 まだ1年生だからベンチ入りも叶わないんだけど、入部してからずっと休まず練習を積み重ねてきた俺。

 そんな姿を先輩達はちゃんと見ていて、「俺達に何かあった時は頼むな」と嬉しい言葉をくれる。

 先輩達レギュラー陣に何かあったら…なんてそんな事あっちゃならないけど、もし仮にそういったアクシデントに見舞われたら、俺はいつだって力になる心構えは出来ていた。



(キーン、コーン、カン、コーン。)

「はい、鉛筆を置いてー。後ろから順に前へ送って。
 これで全ての試験が終了だな。皆お疲れ様!」

 コタ先生がニッカリ笑顔で俺達を労いながら、最前列の席に集められた答案用紙を順番に受け取った。

「うあー、終わったぜー。
 赤点じゃないハズ、絶対、多分、おそらく。じゃないと困る!
 俺から野球を取らないでくれぇー」

 大袈裟に胸の前で両手を組んで天井を仰ぐ俺を、通路を挟んで左の柏木とその前の由野が含み笑って、更に柏木が被せる、「65点」。オメーの演劇観点の点数はいらねーっつうの。

 テストの時は出席順になる、一列一列にきっちり通路は作られるけど、入学当初の席に心なしかほっとしたりして。

 ふと廊下側を見る、俺と同じ最後尾の席の樹深と視線が絡んだ。これも変わんねえな。

(ドウシタノ、カレ)

 樹深が口パクをして、俺の前の席を指した。

 なんのこっちゃ、俺だけじゃなくて柏木も由野も、吸い込まれるようにそちらに視線を送ったら。

「はあぁ~…赤点じゃないといいなぁ~…」

 丸山が覇気無く机に突っ伏していて、眼鏡が若干ずれていた。

 丸山も柔道の部で総体に出る為に沢山頑張ってんの、俺知ってる。

 丸山なら大丈夫だろ、俺より頭いいんだからさ。





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