悠の詩〈第1章〉

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「あーっ来た来た、柏木さん、柳内、早く早く」

「お土産買えた? 急ごう、走るよ!」

 班の皆とようやく合流して、残り10分、ダッシュでゴールに向かった。

 その途中でコタ先生と千晴先生を追い越して、その時はもう手は繋がれていなかった。

「ほら、いつまでも見てない」

 走りながら柏木がたしなめた。気になっちまうからしょうがないじゃん。

 14:30前になんとかT岡天満宮の敷地内に滑り込めて、生徒達が集まっている所へ着いたのは若干タイムオーバーだったけど、さっきの通り雨の事もあって特にお咎めは無かった。





 これにて、遠足終了。長い一日だった。

 帰りのバスに乗り込んだ時にどっと疲れが出て、座って早々俺のまぶたは重々しく閉じられた。

「柳内、寝たの?」

「ずっとはしゃいでたからね、スイッチ切れたんじゃない?(笑)」

 周りでヒソヒソクスクスと聞こえるけど、構うもんか。

「後藤くん、彼がキレイなおねえさんが好きって知ってた?」

「あーバレた? 見てたら分かるよね(笑) 俺の姉ちゃんの事もずっと好きだし。
 っていうか春、柳内くん、一途だと思ってたのに…どこの誰に浮気を?(笑)(笑)」

「いやーそれが…(笑)」

 俺の後ろの座席で並んでいるらしい樹深と柏木が、小声で話してる。

 おいこら、オマエこそ、うっかりペラペラ喋るんじゃねーぞー。



 柏木が約束(なんてしてないけど)を破ったかどうかを見届ける前に…俺は意識を落としたのだった。



 言わなかったらしいのは、後で聞いた話。










悠の詩〈第2章〉に続く






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【悠の詩】中間雑談・4





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