悠の詩〈第1章〉

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 コタ先生が顔だけ店の中に突っ込んでキョロキョロと見回したので、俺達は更に身を屈めて息を潜めた。

「いや…ここにはいなさそうだ」

「丸山くん達の班、柳内くんがまだ戻らないんだったよね。大丈夫かな」

「ほんとに…何やってんだかあいつは。もう少し向こうを探してみるか」

「うん。はい、入って」

「おう。悪いな」

 再び広げられた千晴先生の傘にコタ先生が狭苦しそうに入り込んで、二人は雨の中を歩いていった。

「今の内に。ほら、入っていいよ」

 先生達がこちらを見ないのを確認してから、柏木が傘を広げて俺を促した。

 柏木の傘に入ろうとしながら先生達の方を見ると、

「…あっ」

「ナニ。
 ……あっ」

 コタ先生

 千晴先生の手を握ってる

 千晴先生がびっくりした様子で、その握られたままの手を胸元まで上げて何かをコタ先生に言ったけど、結局繋がれたままで、そのまま雨煙りの中へ消えていった。

 俺と柏木はしばらく黙ったままで、そうする内に雨が止んだ。ただの通り雨だったのか。

 柏木はパタンと傘を閉じて、

「見たコト、うっかり喋らないようにしなよ」

 とっとと皆が待っている所へ早歩きしていった。

「言わねーよばか、オマエだって気を付けろよ」

 どのクチがそれを言う? と言わんばかりの顔つきを柏木がしたのを、俺は一切スルーした。





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