悠の詩〈第1章〉
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「もしかして…アレ?」
さっき由野が髪飾りを選んでいた棚を指差す。由野とのやりとりの際にちらっと目に入っただけで、柏木の言うヤツに間違いないかどうかは自信ない。
「うわ、アレだ。やっと見つけた」
柏木はそっちに駆けていって、チビっちゃい招き猫達が並べられているのをまじまじと物色した。
そしてすぐにレジに戻ってきて、手に乗せられたいくつかの招き猫を精算した。
おきあがりこぼしで、色んなカラーがある。厄除けとか健康運とか、色によって違うんだって。
「お土産用の小袋をお入れ致しますか?」
「はい、お願いします」
あれ、自分用じゃないんだ。ということは。
「劇団用の? オマエ、さっきのお煎餅の箱買いで事足りたんじゃなかったのかよ」
「まぁそうなんだけど…
コレは環奈さんに、集めてるって言ってたからさ…
何色を持ってないか聞かなかったからなぁ、被ってたらどうしよ…
……あ」
話す途中で俺を見て、言葉を止めた柏木。やばっ、って思ってるのが見え見え。
「環奈さんにかー。渡す時、俺が見つけたってアピールしといてくれよ」
「はー…キミが綺麗なおねえさんが好きなのは分かったから。
そういうのは自分のクチで言いなよ。その軽ーいクチでさ」
ウキウキの止まらない俺に、柏木は呆れ顔で皮肉りながらバッサリと斬った。
…