悠の詩〈第1章〉
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由野の言葉で、木刀のお買い上げを決意した俺。
奥まったレジでお会計をしているところで、入口にまた見知った顔。柏木だった。
「はあ、こんなとこにいた」
「え、悪い、俺の事探してた?」
「そうでもない。いや、そうでもあるか。もう皆お煎餅屋さんに戻ってきてる。
知ってる? 先生達がモタモタしてる生徒達に声掛けてるって。
さっき私達も土浦先生に会って、柳内がお土産買いに行ってるから待ってるところだって答えた。
なるべく早めにな、って言って行っちゃったけど…」
「悪い悪い。これ買うだけだから、すぐ行く」
「(笑) 結局買ったのかい、ソレ」
「うるせ。お前があそこであーだこーだ言わなけりゃ、もうちょい安く買えたんだぞ」
「ふっ…そりゃ申し訳ないね」
そんな会話をしている間中、柏木は店内を見渡して首の動きがせわしなかった。
「ナニ…オマエ、なんか探してるの?」
俺のお会計が終わってもまだそんななので、怪しく思って柏木に聞いた。
「いや、あー…あれば、って思ってるだけなんだけど…
招き猫。こんくらいちっちゃくて、倒してもすぐに起きるヤツ」
親指と人差し指を平行に1cmくらい空けて表現した柏木。あれ、なんかそれ、知ってる気がする。
…