悠の詩〈第1章〉
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「本当にここ?」
思わず口に出ちゃったのは、入口が周りの木達に覆われていて、一瞬見ただけじゃ分からなかったから。
それに、竹寺とも呼ばれる程のはずなのに今の所竹の一本も見えやしない。
「間違いないよ、ほらここに【H国寺】って。柏木さんありがとう、おかげで迷わずに早く来れたよ」
丸山にお礼を言われて、少し肩を竦めながら、どういたしましてと柏木は応えた。
一歩門を跨ぐと、少し誇張し過ぎかもしれないけど、外の喧騒はシャットアウトされた。
風が木々を撫でる中、細い石畳の参道を辿っていく俺達。
本堂に着くまでちょっと距離があったけど、脇に小さな池や石庭があったり、飽きず目を楽しませてくれる。
ここでも控え目にだけどあじさいが咲いていて、特に可愛らしいお地蔵様の後ろに咲いてたのがツボにはまった。
丸山が何枚も撮ったし、調子に乗って俺達もレンズに収まった(笑)
石段を上ると、立派な本堂が目の前に現れた。
ここでふと思う、ここって拝観料タダなんだっけ? ここに着くまで、受付とか出てこなかったよな。
それに竹林もさぁ、やっと本堂の後ろにちょっと見えて、それだけ?
ドコが、ナニがオススメ?? と思っていたら、
「ねえねえ! お抹茶付きの料金の方で入るでいいんだよね?」
いつの間にか女子達3人が本堂の横にいて、そこから俺ら男子を呼んだ。
「そうそう。受付そっちだったんだね、見えてなかった」
丸山がほっとした顔をしてそっちに駆け寄る。
「柳内! 後藤くんも! そんなの後からいくらでも見れるでしょ、早く来てよ!」
本堂の手前にあった、でっかい水瓶の中で泳いでいる金魚たちを興味深げに見ていた俺と樹深を、小林と浜野が若干苛つき気味に呼んだ。
ごめんごめんと柔らかく謝る樹深と、そんな怒鳴るなよとおちゃらける俺、厳しい視線を浴びたのはもちろん後者だった(苦笑)
丸山と柏木のついた軽い溜め息は、聞かなかったことにしておこ。
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