悠の詩〈第1章〉
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文化館の前におっきな園庭があって、そこで俺達はシートを広げてお弁当を食べた。
ここも高台で、手前の町並みも、海も、少し遠い景色もよく見える。海岸沿いを、丸山が楽しみにしているE電がゆっくり滑走していた。
「あっほら、次はあれに乗るから。今の内に乗車券渡しとくね」
そう言って丸山は皆の分のチケットを配る。
「考えてみたらさぁ、この乗車券なら、あの島までも行けちゃうよね?」
ふと樹深が、俺達がこの後向かう方向と全く逆の方に目をやって、そんな事を言った。
「あ~E島でしょ? そうだよね、水族館とかもあるし、そっちのが楽しそう~」
「あ~ダメダメ! 今日はK倉観光なんだからね。
そういうのは、あの、す、好きな人とかね、行くもんでしょ…!?」
丸山の力説というか、最後はめっちゃしどろもどろだった言い分に、全員が吹き出した。
「やだもう丸山くん、顔真っ赤~!」
小林と浜野の茶化しに、丸山はますますゆでタコになった。
丸山はきっと由野とE島を歩きたいんだろうな。
そんな事を思ったら、どうやら不気味な笑みが出ちゃっていたみたいで、樹深には肩で肩を押されて、柏木には後ろから軽く頭をはたかれた。
「いってえ」
痛みが残った所をさすりながらつぶやいたけど、二人は素知らぬフリをするので、俺もスルーして残りのお弁当を掻き込んだ。
おかずは全部揃ってた。サトちゃん先生、さすがに冗談だったらしいや(笑)
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