悠の詩〈第1章〉

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「ねえ、大仏の中、入れるみたいだよ。拝観料20円」

「えっ入れるの? すげーじゃん」

 立て札に気付いた柏木が、皆を大仏様の後ろに呼び寄せた。

 こじんまりとした石造りの入口をくぐると、中はかなり暗くて、上の方にある背中の窓からの光が射し込むだけ。

 それでも、大仏様の内側…法衣の重なり具合いとか渦巻きみたいな髪の所とか分かる。

 丸山の豆知識によると、体内拝観(って言うんだって)は有名なN県の大仏では出来ないから、ここで体験出来るのはとてもありがたい事だとか。

 ほえ~っという俺達の感嘆の声が響いて、上へ抜けていった。



 それから正門の近くまで戻って、入る時に気になっていたお土産屋さんに少し寄った。

 外国人が喜びそうなチビサイズの大仏マスコットとか漢字Tシャツとか、見てるだけでも楽しい。

「あっ、もうこんな時間…ちょっと急がないと、お昼を食べるのが遅くなっちゃうかも」

 丸山が腕時計を見ながらそう言って、皆がぞろぞろお店を出る中、俺だけもたもたと踏ん切りがつかない。

 それを見かねた柏木が、呆れた顔をして俺の肘を持ち上げて引っ張り出した。

「あ~っ、木刀~っ」

 いい感じに渋い木刀を見つけちゃった俺、柏木に引きずられながら、それに向かって片手を伸ばす。

「また、くだらないのを欲しがるね…まだ沢山回るんだから、邪魔になるだけ。買うなら最後のK町通りにしなよ」

 だってよ、見た? 学生割引だってよ、お得。

「はっ、たかが100円引きでしょうが」

 柏木にバッサリ切られて、お土産屋を泣く泣く後にした俺だった。

 後から思えば、無駄な買い物せずに済んだんだけどさ。





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