悠の詩〈第1章〉
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駅を出発してから、トンネルを抜けたりもして坂を登りきった俺達。
ちょっと平坦な道になったところで大きな車道から外れて小路へ入る、普通に民家が建ち並ぶ中を進んだ。
ハイシーズンの時はさぞかし観光客でもっと賑やかになって、この辺りに住んでる人達には大変なんだろうな、なんて知ったような同情心を持ったりして。
それにしても、一定間隔で【Z洗弁天まで○.○km】って標識を見かけるのに、そのクセいつまでも到着しなくて若干イライラ。
そう思っているのはきっと俺だけじゃない。
「あれぇ…なかなか見えてこないね。道は、間違えてないはずだけど…多分」
丸山もさすがに不安げ。梅雨特有の蒸し暑さにこれまでの徒歩も加えて、顔には沢山の汗が流れていた。
「ちょっと、迷ったわけじゃないよね」
「どうなの丸山くん」
小林と浜野が少し責め気味に言うので、丸山はますます縮こまったし、俺はカチンとした。
そんな事言う資格お前らにあるのかよ、喉まで出かかったところを、不意に誰かに肩を叩かれた。
振り返ると柏木。
そして…
ダレ? このおばあちゃん?? (どビックリ)
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