悠の詩〈第1章〉
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席の目の前まで来た時にふと、前々から思ってた事をつぶやいた。
「なあ…
丸山、好きだよな? アレ」
「声でかっ…」
「クチ軽っ…」
俺の前後にいた樹深と柏木から、短くも鋭いブーイング。
周りはまだ相談でガヤガヤしていて、小林と浜野が二人でまたK町通りのページを広げながらキャッキャ言ってたから、俺の発言は他には聞こえてないと思うけど。
「なんだよ揃って…てか、お前らだって薄々思ってたろ」
二人の顔を交互に見て、向こうの丸山と由野にも視線を投げる。
色々質問してくる由野を、真っ赤な顔で対応する丸山。
丸山がゆでダコになるのは、由野が近くにいる時だけ(笑)
「まあ、ねぇ。見てれば。
でもさ、そこは口に出さずにさ、見守ろうよ。本人から相談されたわけでもないんだからさ」
俺に淡々と説く樹深に、柏木がやたら大袈裟に何度も頷く。
「後藤くん、キミ、なかなか気ぃ遣いだね?(笑)」
「そぉ? まぁ、色々見守りたいんで(笑)」
俺の胸の前で堅く握手なんてしやがる、手刀でおりゃってやりたくもなったけど、やめといた。
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