悠の詩〈第1章〉

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「えーと…まるっきり方向違いで申し訳ないんだけど…
 知り合いが、ここの竹林いいよって言ってたから…行ってみたいかなぁ、と」

 柏木が指を差したのは、H国寺。

 丸山がまとめたコースから、K倉駅を挟んで反対側にある。駅からバスで行くみたいだ。

「いいね柏木さん! ほら見て、Mシュラン三ツ星なんだって」

「あと、お抹茶とお茶菓子も頂けるみたいだよ!」

 小林と浜野が代わる代わるに言って広げたページに、【見事な竹林を眺めてのお茶は一級品!】なんて見出しが出ていた。

「そしたら、H国寺はK町通りに行く前にしよう。お昼過ぎに着けるように…
 となると、お昼をどこで受け取るか悩みどころだけど…先生に相談してみようか」

 丸山が地図に赤ペンでルートを結んで、柏木が用紙に目的地を書き込んだ。

 それらを持って俺達は揃ってコタ先生の所へ。

「ほーっ。色々出たな、優秀優秀」

 お弁当の事を相談したら、じゃあH谷寺の後でここに寄るといい、とK倉文学館を勧められた。

 広い園庭があって、そこでシート広げて飲食オッケーなんだって。

 というわけで、俺達の班のコースは、スタートK倉駅→Z洗弁天→K倉大仏→H谷寺→K倉文学館→H国寺→K町通り→ゴールT岡八幡宮、と決定。

「ここからここまで、相当歩くからな。覚悟して行けよ?」

 K倉駅からH谷寺までのルートを指で辿ったコタ先生は、そう言いながらニヤリと笑った。

 げ、バスとか出てないらしい。道が細くて通れないんだとか。

 タクシーや人力車なんて手段もあるけど、金がかかるから却下。

 ハイキングのつもりで行けばきっと楽しいぞ! という先生の言葉にうまく丸め込まれて(苦笑)、コースはそのままで提出された。





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