悠の詩〈第1章〉
57/83ページ
「うん、ゴールのT岡八幡宮のそばだから…最後に入れておこうか。
さっき後藤くんが言ったZ洗弁天もいいよね…そこから近い所で、K倉大仏へ歩いて行けるし…
あと、先生がアジサイの事言ってたけど、ここ。H谷寺のアジサイが綺麗だし、そこの観音様も有名なんだ。
あ、そこからE電乗ってK倉駅に戻ってもいいよね」
丸山がマップを指でなぞりながら解説していく、それを俺達は興味津々で見つめた。なんかもう、コースが出来上がった?
「いいんじゃね、それで? 先生に大丈夫かどうか聞いてみよーぜ」
樹深と小林と浜野が頷いたのを見て、俺は席を立った。
ら、丸山が俺のシャツの脇腹の辺りを摘まんだ。
しかも意外に引きが強くて、俺はあっさり自分の席に戻された。
そういや丸山柔道部だった、なんて今更思い知らされた俺に、丸山は言った。
「ちょっと待ってよ柳内くん、皆の意見を取り入れたいのに…
柳内くんは? 行きたい所、リクエストは無いの?」
「さっきも言ったじゃん、俺、K倉行った事ねーからさ…
丸山が言った所全部、面白そうって思ったぞ?」
俺の言葉を聞いて、丸山は恥ずかしそうに「ありがと」と呟いて、でもまだゴーサインを出さない。
「柏木さんは? まだ、柏木さんの意見を聞いてない」
皆が一斉に柏木を見た。
あらゆる角度からの視線を受けて、柏木の目がウロウロとするけど、相変わらずクールな表情を崩さない。
丸山の案を否定するようなヤツじゃないと思ってるんだけど、何だろう、変わったコトを言いそう。
へんてこな予感を抱いてたら、その通り、柏木はとある提案をしたんだ。
…