悠の詩〈第1章〉

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「うん、ゴールのT岡八幡宮のそばだから…最後に入れておこうか。
 さっき後藤くんが言ったZ洗弁天もいいよね…そこから近い所で、K倉大仏へ歩いて行けるし…
 あと、先生がアジサイの事言ってたけど、ここ。H谷寺のアジサイが綺麗だし、そこの観音様も有名なんだ。
 あ、そこからE電乗ってK倉駅に戻ってもいいよね」

 丸山がマップを指でなぞりながら解説していく、それを俺達は興味津々で見つめた。なんかもう、コースが出来上がった?

「いいんじゃね、それで? 先生に大丈夫かどうか聞いてみよーぜ」

 樹深と小林と浜野が頷いたのを見て、俺は席を立った。

 ら、丸山が俺のシャツの脇腹の辺りを摘まんだ。

 しかも意外に引きが強くて、俺はあっさり自分の席に戻された。

 そういや丸山柔道部だった、なんて今更思い知らされた俺に、丸山は言った。

「ちょっと待ってよ柳内くん、皆の意見を取り入れたいのに…
 柳内くんは? 行きたい所、リクエストは無いの?」

「さっきも言ったじゃん、俺、K倉行った事ねーからさ…
 丸山が言った所全部、面白そうって思ったぞ?」

 俺の言葉を聞いて、丸山は恥ずかしそうに「ありがと」と呟いて、でもまだゴーサインを出さない。

「柏木さんは? まだ、柏木さんの意見を聞いてない」

 皆が一斉に柏木を見た。

 あらゆる角度からの視線を受けて、柏木の目がウロウロとするけど、相変わらずクールな表情を崩さない。

 丸山の案を否定するようなヤツじゃないと思ってるんだけど、何だろう、変わったコトを言いそう。

 へんてこな予感を抱いてたら、その通り、柏木はとある提案をしたんだ。





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