悠の詩〈第1章〉
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K倉大仏、H谷観音、G氏山公園、I村ヶ崎海浜公園、K倉宮、H国寺…有名どころみたいだけど、俺にはちんぷんかんぷん。だって行った事ないもん。
「なー、K倉って誰か行った事ある?」
両肘付いて頬を挟みながら俺は言った。
「ずいぶん昔に家族で行った事あるよ。名前と詳しい場所は忘れちゃったんだけど、どこかにお金を洗うって所なかった?」
隣の樹深がガイドブックを捲りながら言う。
「へっ、ナニその面白そうなの(笑)」
「あー。Z洗弁天。お金をそこの泉で清めてお財布に入れとくと、お金が増えるってやつでしょ?」
「それだそれだ。丸山くん、詳しいね?」
急に饒舌になった丸山を、俺と樹深はビックリしながら見つめると、丸山は照れたように肩を竦めて話してくれた。
「えへへ…実は僕、私鉄が好きで。
ほらここって、E電が通ってるじゃない? まだ乗った事がなくて…
いつか乗った時の為に、周辺の観光スポットはなんとなくだけど頭に入ってる」
「「へーっ! そうなんだ!?」」
丸山以外の全員がそうハモって、丸山はもっと縮こまってしまった。
「じゃあさー、丸山くんのオススメでコースを組もうよ。あたし達はよく分からないからさ。
あ、でもお土産とか見たいから、ほらこの、K町通りは絶対入れて欲しい~」
小林と浜野はキャッキャと騒ぎながら、K町通りの事が書いてあるページを広げた。
お煎餅や和菓子の老舗はもちろん、雑貨屋とかお洒落なカフェなんかもあるらしい。
いかにも女子がスキそうだわ。柏木も少し口元を緩めながら「いいね」なんて言ってら。
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