悠の詩〈第1章〉

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「部活になかなか行けなくて申し訳ないな…千晴先生、何か言ってた?」

「おー。いつでも待ってるってさ」

「そう。
 …くく、コタ先生、ちはっちゃん。
 聞かなかった事にしとく(笑)」

 わざわざ噛み殺して静かに笑う柏木。

 ステージの上でしか、感情を大袈裟に出来ないんだろうか。

 そんなワケないか? 連休中に見たもんな、由野と笑い合うコイツを。

 そんな事を考えていると、非常口の向こうから「おぅい、待たせたな。柳内、送っていくぞ」コタ先生の声がした。

「やっと終わったみたいだ。さあ行こう」

 さっさと屋内へ消える柏木の後を慌てて追って、非常口を跨ぐ。

 再びステージへ戻ると、環奈さん他役者さん達がすでに外から帰ってきてて、次の稽古に向けて準備を始めている所だった。

「柏木さん、皆さん、稽古の途中におじゃましました。ありがとうございました」

 先生が丁寧に頭を下げるので、俺も並んで一緒におじぎした。

「いえいえ」

「お気になさらずに」

「気を付けてお帰り下さいね」

 口々に言ってくれる中、俺は環奈さんと目が合って、【またおいでね】と口パクをしてくれた。

 また頬っぺたが尋常に熱くなった。





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