悠の詩〈第1章〉
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コタ先生を部屋に通すと開口一番、
「お前は~、あの時ここに乗りながら手ぇ振ってたんか。危ないだろ(苦笑)」
窓のすぐ下に置いてある低いタンスを見ながら先生は言った。
「そうそう。大丈夫だよ、いつもやってる事だもん」
「もっと危機感持ってくれよ、落ちたらシャレにならないだろ~」
「はぁい」
「おっ! 柳内、こんな古い漫画持ってるのか?
これ、先生が子供の時に連載してた野球漫画だぞ。懐かしいな~」
「先生読んだ事ある?
へへへ~、俺この漫画読んで野球始めたんだ。主人公の○○くんがさ~、がんばり屋でさ~…」
思いの外話が盛り上がって、俺の部屋でまた時間が過ぎていく。
「あっ、いっけね、また時間を食ってしまった」
先生が俺の部屋の壁掛け時計を見て声を上げて、やっと俺の家庭訪問が終わりを告げた。
「先生、召し上がらなかったから、よかったらお持ちになって下さい」
玄関でかあちゃんが手付かずの煎餅をいくつか先生に持たせて、先生は申し訳なさそうにそれを受け取って鞄にしまった。
「ねえ先生! 俺は案内は…どうすればいいの?」
先生が頭を下げて出ようとしたから、俺ははっとして呼び止めた。
次は柏木ん家の番、本当なら俺が連れていくルールなのに、柏木に聞きそびれてるし、先生は家を分かってるっぽいし。
先生は振り返ってしばらく考える様子を見せて、
「…じゃあ…一緒に来て貰うかな。
お母さん、少しだけ柳内くんをお借りします」
と言った。
「どうぞどうぞ。
…春海、次のお宅に【先生をお連れするのが遅くなってすみません】ってちゃんと言っておいてねっ」
後者の方は俺に小声で、かあちゃんが言った。
先生の柳内家滞在時間、約40分だった(苦笑)
…