悠の詩〈第1章〉

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 また鬼のような坂を上って下って、それぞれの家へ帰る別れ道に来るまで、俺達は無言でペダルを漕いだ。

「じゃあな、ハル。明日入学式だろ? がんばれよ」

「おー。ユキ、ヤは明後日だっけ。そっちこそがんばれよな」

「ハッハ。ユキのままでいいよ。お前は許す。元気でな、ハルミ」

「オイ! 俺は許してねー! ハルミって言うなー!」

 ハッハッハッとふざけた笑いをしながらユキが帰途に着く背中に向かって、俺はぷんすか叫んだ。

 だから、ユキの最後の言葉の重さを感じ取る事が出来なかった。

 俺は中学でも野球を続けるつもりで、ユキもそうだと思ってた。いつかどこかで対戦したりするかも、なんて。



 ユキは…野球を続ける事はなかった。

 そして、俺達がこの先再会することもないのだと分かるのは、ずっとずっと先の事だった。





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