悠の詩〈第4章〉

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「なあ、先生の返事何て書いてあった?」

 パラパラとノートが返ってきた頃に樹深と丸山に聞こうとしたら、

「言わないもんだし、聞かないもんだよ、こういうのはさ」

 傍を通りすがった柏木にさらっと諭され、「そーよう、プライベートゾーンよ」由野もそれに同調して横槍を入れながら、ほら次移動だからね、柏木と一緒に教室を出ていった。

「そういうもん? そりゃ人それぞれだろうけどさ」

 机の中の教科書やノートを探りながら、ふとある疑問に辿り着く。

「だいたいよー、初回は自分の家族の事だろ? 言えないような事なんてあんのか?」

 言い終えて顔を上げると、樹深と丸山はそれぞれ腕を組んだり顎に手を宛てたりして、考えるような素振りを見せた。

「そういう…もんかもねぇ。誰にだって言いたくないヒミツのひとつやふたつあるもんだよ、きっと」

「へえ、俺なんてお前ん家のあれやこれや、だいたい把握してるけどな(笑)」

「やあねぇ柳内さん、アヤシイ事言わないで下さる? そんならウチだって、お宅のあれやこれや(笑)」

 俺と樹深の漫才に肩を揺らせて控えめに笑う丸山、「そーいやオマエん家の話、あんま聞かないな?」俺に急に振られて若干むせたけど、ちゃんと答えてくれた。

「そうだねえ、後藤くん家が犬飼ってるって前に聞いた時に、実はずっと言いたかった事が…
 僕ん家オカメインコ飼ってて」

 へえぇ!? 周りではあまり聞かない(少なくとも俺の知り合いには全くいない)珍しい飼育動物の登場に、俺と樹深は感嘆の声を上げる。

「ノートにも書いたんだけどね、雛の時から挿し餌とかお世話してて…僕に一番懐いてるんだ。
 放鳥する時ももっと飛んだらいいのに、すぐに僕の肩に留まるのが可愛くてさ」

 二人にも会わせてあげたいな、はにかむ丸山のお誘いを是非是非! と食い気味に受け取った俺達。(実際そう日の空かない内に丸山家におじゃましたのだった)

 ほらなー、こうやって交友の輪が広がるんだから、積極的に活用したらいいんだよ。

 すでに姿のない柏木に文句を垂れたってしょうがないけど、そう思わずにはいられないや。



 ──結論からいうと、夏休みに入るまでに二度目を提出したのはクラスの1/3にも満たず、2学期が始まってからはもう誰もノートの事なんて忘れた様だった。(活用云々言った自分も、一度目以降何もしてない)

 只一人、柏木だけが月に一、二度機械的にノートを提出していて、何をそんなに書く事があるのか、思いはしたけれどそれ以上の詮索をする事は無かった。

 どうせ飛ばすに決まってら、鋭利な眼差しと「キミには関係ない」をさ。





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