悠の詩〈第3章〉

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 由野が買い込んだおやつは、ちゃんと皆で割り勘してから頂いた。

 宣言の通り柏木はお菓子をふたつみっつ摘んで、丸山からブランケットを借りると、

「じゃ、お先におやすみ」

 俺が散歩でいない間にこしらえた寝床──展望台の角っこにレジャーシートを敷いて、壁に寄り掛かりながら眠るようだ──へと向かっていった。

 取っていった分と勘定の合わない金額を寄越した柏木、悠サンからこんなに貰えないよと由野が言ったのに、それを頑なに断ったから、

「これは後で悠サンに持たせる分、みんな取ったらダメだからね」

 丁寧に袋に取り分けて、まだ頬張っている俺達に釘を刺した。

 しばらく四人で雑談をしていたが、

「ごめん、俺もちょっと寝てきていいかな」

「私も、お腹いっぱいで眠くなってきちゃった」

 深夜2時を回った所で天文部全員が夢の中へ。

「朝まで皆起きて話し込んでるかと思ったけど…無謀だったか。
 日の出まであとどんくらいかな」

「6時50分くらいらしいから、まだ5時間近くあるよ。
 柳内くんも眠気があるなら、今の内に皆と寝てなよ」

「俺は平気、丸山は?」

「僕も平気」

 残った俺と丸山は、夜通しを決めたもののあまり離れているのは安全では無い気がして、眠りこけている三人の傍へ移動した。

「あ、よければ眠気覚ましにガムどうぞ、ちょっと辛さ強いけど」

 掌に乗せてくれたのをそのまま口に放り込んだら、スーッとした空気が目から漏れて(いるように感じて)「うひーっ、効っくぅ」変な声を出して目頭を押さえる俺を、丸山は愉快そうに見た。

「静かにしてた方がいいかな、起こすと悪いよな」

「そうだね…あっそうだ、こういう時の為に暇潰しを持ってきたんだった。
 ウノ、はふたりだとつまんないか。
 雑誌、は電車とかお出掛け関係しかないけどよければ。
 ウォークマンも、あるけど選曲は僕好みのしか」

 どこぞのハイテクなポケットみたいに、リュックから色々出してくる丸山。こんなに気の利く男子も珍しいよな、由野じゃないけど友達として誇らしい。

「何から何まで悪ィな。そんじゃあ…ウォークマン借りようかな」

 はいどうぞ、じゃあ僕は読書してるね、丸山はランタンの光が邪魔にならないように俺達から少し離れた。

 ゆっくり闇夜の時間が流れる中で、丸山チョイスの歌謡曲に耳を傾ける。

 今流行りのものだけでなく、俺達の親が若い時に聴いていそうな古めかしい旋律メロディーもあって、それらがすっかりガムの効力を消し去ってしまって…

 あー、やべー、と思った直後に意識を落とした。





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