悠の詩〈第3章〉
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とりあえず課題のものは探し出せたし、天文部の三人がまとめを相談する傍らで、俺と丸山はお先に夜食を頂いた。(先に食べてろとお達しがあった上である、名誉の為に言っておく)
「あっステーキ串なんてあったのか? いいなぁ、何で見つけられなかったんだろ」
「橋の所、川沿いに奥に入った所にあったよ。
柳内くん射的で時間使ったから、そっちまで気が回らなかったんでしょ。後藤くんから聞いたよ(笑)」
そーよそーよ、丸山さんもっと言ってやって、樹深が笑いながら茶々入れしてくるもんだから、むせて頬張った焼きそばを散らばしそうになった。
「げほっ…オメーもアッチコッチ連れ回しただろうが、あれもウマそう、これもウマそうってよ。
あっそうだ、由野にはさっき言ったけどさ…コレ誰か要る? 射的の戦利品なんだけど」
射的の話が出たからついでに、くまの貰い手を募ってみる。
「俺的には、案外丸山が欲しがるんじゃねぇかと思ってる(笑)」
何で! と丸山の叫びが闇夜に響いて、余計に可笑しさを誘う。
「柳内くんごめん、僕が持つにはさすがに可愛過ぎるかと」
「残念、期待してたのに(笑) オメーは?」
柏木にも振ってみるが、まとめを書きながら「私もいいかな」こっちを見ずに答える。分かっちゃいたけど、行き場の無いくまがやるせない。
「ていうか、由野さんも断ったの?」
樹深が意外そうに聞いて、由野は苦笑いをしながら「そうなのよー、ごめんねぇ柳内くん」と受け流す。それについて樹深は追求する事はせず「あらまあ」と済ませた。
そうこうする内に作業が捗ったのか、
「うん、ここまでまとめれば、あとは各自でいけるね」
「そうだね、最終チェックは学校で…今日はここまでで、お疲れさん」
「お疲れ様ぁ。丸山くんランタン助かったよ、ありがとう」
準備よく持ってきていた丸山のランタンを掲げて、三人がこちらへ戻ってきた。
「いいえー、寒い中お疲れ様。よかったらあったかいお茶を、ごはんと一緒にどうぞ」
これまた準備よく丸山がでかい保温水筒にお茶を淹れてくれていて、紙コップに注いで三人に渡した。俺もさっき頂いた。
三人がようやく夜食にありつけて、甲斐甲斐しく丸山がブランケットを渡したりお茶のおかわりをしたりするのを賛辞する輪から抜けた俺。
「あれ春海ちゃん、どこ行くの」
「食べたら動かねぇと気持ち悪いんだ、ちょっとその辺ぶらついてる。おやつタイムになったら呼んでくれな」
展望台の周りをグルッとするだけのつもりで、でも外灯の明るさだけでは心許無かったので、「コレ借りてくな」樹深の携帯灯を手に取って螺旋階段を降りた。
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