はるみちゃんとぼく
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何が起こったの? 視線を上げると、皆が皆総立ちして両腕を前方へ伸ばしていて、僕の背後からも突き出た腕が何本も、少しゾワッとした。
「よっしゃあ! 兼庄よくやったあ!」
お父さんの興奮した声で全てを察した、兼庄選手の打ったボールがホームランとなって、こちらに飛んでくるのだ。
春海ちゃんは、と見ると、皆と同じ様に手を伸ばしていたけれど、どこか落胆した様な顔を見せた。その心の内を、
「ああ、ここまでは…無理かも」
春海ちゃんのお父さんが代弁する。そうだ、うちのお父さんもさっき言ってたじゃないか、こんな後ろまで、プロでも難しいって。
そしてその言葉の通り、スタンドフェンスは越えたけど、前列、応援団のお兄さん達のすぐ後ろへボールが消えていこうとしていた。
中にはグローブを持参した
ホームランを確認出来て、ビジョンはベースをゆっくり周回する兼庄選手を映し出し、ファンファーレの電子音を鳴らした…
その、一瞬の隙を突いた出来事が起こった。
「──わっ、えっ、うそっ!?」
春海ちゃんが慌てたように腕を目一杯上に上げて、両手の平をお花にして…
その中に、なんと、ホームランボールが飛び込んで来たのだ。
前列の誰かがキャッチしたものと思っていたら、誰も拾えず、こっちに大きく跳ねたらしい。
突然訪れたラッキーに、驚きと嬉しさで春海ちゃんの手が震えて、ボールをポロリと落としそうになったので、僕とお姉ちゃんとで春海ちゃんの手を覆って逃さないようにした。
「もー、何やってんの春海くん、ちゃんと掴んでないとダメでしょ」
お姉ちゃんが諭すのを、春海ちゃんは気まずそうに受け止めて、
「うん、ごめん。ありがと、あずさねーちゃん、たつみ」
坊や達、ゲットおめでとう! 応援団のお兄さん達からの祝辞コールに、ホームランボールを掲げる事で応えた。
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