悠の詩〈第3章〉

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「あーっ来た来た、柳内くん由野さん。ふたり一緒でよかった。
 大丈夫だった? 行列に阻まれちゃってたでしょ」

 俺と由野が三人の所へ戻れたのは、次の年を迎えるまであと10分を切ったところだった。

 俺達の姿を見つけて、特に丸山は大きく安堵の溜め息をついていた。

「あー待たせちゃって悪ィ、通れる所探してだいぶ遠回りしちまったよ。
 先に由野と合流しといて良かったわ、な」

 俺が振ると、由野は「みんなごめんね」手を合わせながら謝罪した。

 そして例のお菓子の袋を掲げて後で食べようアピールをすると、「やったあ」「ありがと」口々に賛辞を受けた。

「そんじゃ行くかぁ。御札云々はやっぱり朝になってからで…お前ら言ってくれよ? まじでアテにしてるから」

 俺のおちゃらけに皆が皆大笑い、いや待て樹深、オメーはそっち側じゃねえだろ。

 とにもかくにも改めて全員集合、俺達は参道の階段を横目に、神社の敷地に沿う緩やかなカーブの急坂を上っていき、中腹の小さな駅を跨いで、目的の展望台がある山に入った。

 一応公園という名前は付いているのだが、外灯があまり無い所なので、ちょっと奥に入ったら目の前は闇。

「さすがに暗いねぇ」

 樹深が手持ちのライトを点けてくれて、それを頼りにゆっくり歩いていった。

「あっ」

 突然丸山が声を上げるので、しかもやたら響いたので、俺達四人はひゃっと驚いた。

「ナニ丸山くん、何かいたの?」

「もうすぐ年が明けるよ、あと10…」

「えっ、もうそんな?」

「わ、と、ちょっとまって」

「2…1…



 ──あけましておめでとう」

 丸山の満面の笑顔の背後から、多分神社から、参拝客達の歓声が霞んで聞こえた。

「このー、俺達を置いていくなって」

 あっゴメンと顔を赤くして謝る丸山が可笑しくて、軽くチョップするだけで済ませた。

「そっか、新年なんだね。じゃ、改めまして、みんな今年もよろしくね」

 樹深が仕切り直して手の甲を上に差し出すと、「お世話になりました」「こちらこそよろしく」「変わらず仲間でいような」次々に手を重ねていく俺達。

 最後に柏木が重ねたのだけど、ふと上を見上げてウロウロと目を彷徨さまよわせる。

「なんだ、どうしたよ」

「どこかで汽車でも走ってる? 汽笛みたいな音がする」

 柏木の言葉に柏木以外の全員が「ああ!」と含み笑いをした、この町で育ったヤツなら知っている事。

「港の船の汽笛だよ、新年に一斉に鳴らすの。
 展望台から見えるかも、行こう」

 由野がそう説明して、柏木の手を取って先に展望台の方へ行ってしまった。

「ちょっと二人とも、みんなで固まってないと危ないってば」

 丸山は心配そうに声を上げるが、展望台はもうすぐそこだったし、ここまで来ればさすがに外灯も設備されていたので、丸山の心配症も樹深のライトもお役御免となった。





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