はるみちゃんとぼく

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【おー おー おおおおおー
 ○○の空に弧をえが
 流星の如くどこまでも
 燃えよ闘志 内なる力を解き放て
 打て打てかっとばせ
 我らの 我らの超新星 兼庄かねしょう
 おおおー おおおー 
 スタンド超えて 虹の果てへ】

 トランペットが旋律を奏で、チアホーンと太鼓がリズムを刻む。応援団のお兄さん達の演舞がかっこよくて、腕の動きだけでも見様見真似でやってみる春海ちゃんと僕。

 「ふたりとも全然違ってる」お姉ちゃんが腹を抱えて笑って、お父さん達は穏やかな顔で僕達を見ていた。

 応援歌の中で出てきた選手が素振りを終えてバッターボックスに入ると、「キャアー兼庄くん、打ってぇ」応援団のお兄さん達の声を掻き消してしまいそうな程の黄色い声が飛ぶ。

「彼、さっき代走で入ってきた選手でしたよね」

「そうですそうです、兼庄選手。今シーズンから一軍入りして、上り調子だそうですよ。若いパワーに期待! ですね」

 売店で応援グッズと一緒に買ったパンフレットを見ながら、お父さんが春海ちゃんのお父さんに説明した。

 お父さんの膝に収まっている僕は同じ様にパンフレットに目を通して、それから巨大ビジョンにアップで映し出されている兼庄選手を見た。

 パンフレットに載っている彼はアイドルみたいな笑顔をしているけれど、画面の中の彼はヘルメットのツバの陰から鋭い目を覗かせていて、そのギャップにちょっと怖いと思ってしまった。

「あの人、打ってくれそうな気がする。なっ、たつみ」

 そう言って春海ちゃんは自分の横を空けて、僕にこっちに来るように促す。

「樹深春海ちゃんとこ行くか?」

「うん」

 すっかり休んだ僕はお父さんにそう答えると、脇から身体を抱え上げられて春海ちゃんの隣に着地した。

 ほいメガホン、春海ちゃんは僕にそれをぽんと渡して、僕の準備が終わるのを見届けてから、

「かっせ、かっせ、かーねーしょー!」

 応援団の手拍子に合わせてあらん限りの声を乗せた。

「かっせ、かっせ、かーねーしょーう」

 やっぱりうまく声を出せない僕は、代わりにメガホンでリズムを刻んで、兼庄選手に思いが届けばいいと願った。





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