悠の詩〈第3章〉
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光の主が目の
「あれーっ二人とも、もう来てた?」
「待たせちゃったかな、ごめんねえ。ちょうどそこで合流したの」
「あのさあ…何で皆そんなはっきり起きてんの」
ひとりテンション違うヤツがいる(笑) いや、ある意味柏木のが体内時計が正常で、俺達の方が異常なのかもしれない。
「一応昼寝してきたし。オメーは相変わらずなのな。そんなんで天体観測出来んのかよ」
「あー…まあ…大丈夫だよ、てっぺん回るのは慣れてる」
観測終わったら寝かせて貰えると助かる、と目を擦りながら言う柏木に、
「柏木さん大丈夫? 一応掛けるもの人数分持ってきてるから、必要な時言ってね。
あ、カイロもよかったら。由野さんも後藤君もどうぞ」
さすがの丸山が機敏にカイロを配り、ありがとう、と3人が口を揃えて感謝を示した。
「なあ、ここに来るまでの道で誰か、知ってるヤツに会った?」
誰からともなく目的地の方向へ、白い息を飛ばして後ろ歩きをしながら皆に尋ねる。
「いやさすがに。みんな家にいるでしょ」
「やっぱり誰も歩いてないよね、静か過ぎてちょっと怖かったよ」
「僕、柔道部の先輩達見たよ。多分同じ
「…ふわあ〜…あ」
やっぱりひとりだけテンション違うでやんの、皆に気を遣って必死に噛み殺してはいるが、全然隠しきれてねぇや(笑)
「しっかりしろよー、初見のお前の為の案内でもあるんだぞ」
見かねた俺は柏木の後ろに回って、男が着そうなファー付きのダウンジャケット越しにグイグイ押した。
「おわっと、わかった、わかったから」まだ若干欠伸混じりの柏木の手を、「悠サンこっちこっち、毎年屋台いっぱい出てるんだよ」笑いながら由野が引いた。
「ふたりともゆっくり行ってよ、柏木さん困ってるでしょ」
「屋台も神社も逃げないんだから」
樹深と丸山が俺達の両サイドを挟みつつ、早歩きになりながらも穏やかに笑う。
あ、なんかこの構図いいかも、青春っぽい。
柏木も同じ事を思ったはず、何故そう感じたのか、自分を連れる俺達の事を順番に見て、最後に正面に戻した時に「ふっ」と笑ったからだ。
俺には背を向けていて見えないが、ジャケット越しにその振動が伝った。
…