悠の詩〈第1章〉

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 仮入部期間中、野球部に入り浸りで「柳内、オマエ馴染み過ぎ!(笑)」と先輩達にいじくられる俺。

 ワッセ、ワッセ、とグラウンドなり学校の外周なりを走っている時に、フラフラと部活を渡り歩いている樹深を見かけた。

 他の連中と混じって楽しそうに体験してる、水泳じゃなくても何か運動するんだろうな、と思った。

 同じ様なのが柏木、でもアイツは体験に加わるでもなく、近くで見学するわけでもなく、あの日海を見つめていたように、距離を保ちながら放課後の風景を眺めていた。

 そしてすぐに校門から出ていく、家の事情ってヤツ? 頭に掠めはしたけど、俺には関係ねーや。



 瞬く間に一週間が過ぎて、本入部申請書を担任に提出する日が来た。

「みんな忘れずに書いてきたかー? じゃあ、後ろの席、回収頼むぞー。
 見るのは禁止だぞー。プライバシーの侵害だからなー(笑)」

 土浦先生が教室に入るなりそう言ったので、俺は立ち上がって自分の列の回収を始めた。

 見るなっつっても、受け取る時にどうしても目に入っちまう。目が良すぎるのも考え物か?

 おっ丸山柔道にしたんだ。柏木が出遅れたので回収待ちの由野のも見えた、へーっ天文部。

 樹深は結局最後まで秘密だったな。後で聞いてみよう、さすがにもう答えてくれるだろ。

 先生に渡して席に戻ろうと回れ右をすると、柏木が回収を終えて先生に向かう所で、その時に柏木の手の中にある申請書を見た。

 一番上に重ねていたのは柏木自身の申請書。何て書いたのか興味があったので、遠慮なく目を凝らす。



(……えっ?)



 それ、提出していいの? という俺の疑問をよそに、柏木は躊躇なく先生に渡した。

 先生も、それが目に入ったはずなのに、軽く頷いただけで何も言わなかった。

「…何」

 席に着いてからも俺がジロジロ見るので、柏木は呆れたように言った。

「だ、って。オマエ、あんなんアリかよ?」

 覗いたの、と柏木はまた溜め息をついて、

「キミには関係ない。何も知らないくせに」

 抑揚なく俺を突き放した。





 柏木の申請書には、【先生にお任せします】と書かれていた。





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