悠の詩〈第3章〉
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「天文部の課題でさ、【冬の大三角形】を観測しようってのがあってね。
個人でもグループでもいいから、冬休み中に観測してレポート書いて、3学期の初活動で発表するんだって。
でね、俺と由野さんと柏木さんとでやろうかーってなって。
なったのはいいんだけど、三人の都合が合うのが大晦日しか無くてさ。
だったら、いつもの5人で集まって、ついでに除夜の鐘聞いたり初詣したりしたら楽しいかなーって」
俺達の課題に付き合って貰う形になっちゃって悪いんだけどさ、そうは言ってるけど、アイツ、ペロッと舌出しながら言ってんだ絶対(笑)
「丸山くんにはさっき電話してOK貰った。春海ちゃんは、いかがなさいますか?」
答えは分かってるクセにワザと試す言い方をする樹深に、俺は肩を揺らしながら返事をした。
「行く行く。そんな楽しそうなのに参加しないなんてあるかよ」
「(笑) りょーかい。
それで申し訳ないんだけどさ、俺これから用事あって出なきゃならなくて」
「うん?」
樹深がそう言う合間に「樹深早く仕度して!」と樹深のお母さんがの急かす声が電話の向こうで飛ぶ。
「由野さんに全員連絡した事伝えないとならないんだけど…春海ちゃん電話頼んでいい? 宜しく!」
「樹深! バス行っちゃうってば!」更に強く急かされた樹深は、最後の方はめちゃくちゃ早口になって、俺の返事を聞かずに電話を切ってしまった。
ツーツー音は俺の耳元で寂しそうに響いたが、それに感傷的になる暇はない。託された使命を果たさないとな。
俺は一旦受話器を戻して、電話台となっているカラーボックスからクラスの連絡網を取り出した。
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