はるみちゃんとぼく

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 応援を頑張ると決めたものの、その意気に僕の声はどうにも追いつかない。

 回を追う毎に無意識に声も表情も萎んでいく僕に気付いたのは、春海ちゃんのお父さんだった。

「タツくん頑張って大きい声出して喉渇いたでしょ、また何か飲み物頼もうか。
 あずちゃんと春海も何かいる?」

 おれまだいっぱいあるから平気ー、私も大丈夫、です、春海ちゃんとお姉ちゃんがそれぞれ答えるのを聞いてから、春海ちゃんのお父さんは手を挙げて売り子さんを呼んだ。

「柳内さんすみません、ありがとうこざいます。
 樹深おいで、座りっぱなしの上に背もたれ無くて疲れたろ。向こうの攻撃が終わるまで休みな」

 お父さんが両腕広げて僕を促すので、まだまだ甘えん坊の僕はその腕に飛び込み、お父さんの膝の間に収まった。

 その様子に春海ちゃんのお父さんはクスリと笑って、売り子さんから受け取った麦茶を僕に渡してくれた。

 春海ちゃんと離れてしまったけど、特に寂しさは感じなかった。それほど僕は疲れていたし、少し休んだらまたそっちに戻るし。

 春海ちゃんは春海ちゃんで、お姉ちゃんと話が弾んで楽しそうにしていた。

「ぼくも、はるみちゃんみたいにかっこよく大きい声出したいのにな」

 ゴクゴクと喉を潤した後で、ボソリとつぶやいた。

 この声は春海ちゃん達には届かなかったが、お父さん達がしっかり拾っていて、

「確かに春海ちゃん応援団っぽいなあ、似合いそう」

「タツくんにはそう見える? かあさんにはやかましいって言われちゃうけどね(笑)」

 それぞれ思った事を口に出して、肩を揺らした。

「そしたらねタツくん、コツを教えてあげる」

 相手のチームをツーアウトまで追い込んだ所で、春海ちゃんのお父さんが僕の耳に口を寄せた。

 「ナニナニ、何ですかコツって」僕のお父さんも興味津々に顔を寄せる。

 春海ちゃんのお父さんは僕達父子おやこを微笑ましそうに見てから、こう言った。

「応援団のおにいさん達が合間合間に応援歌歌ってるでしょ、あれを覚えて一緒に歌ってみてごらん。
 メロディーがあるとね、不思議と声が出やすいんだよ」





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