悠の詩〈第1章〉

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 昼休みの後、5時間目は授業ではなく、各部長副部長によるプレゼンテーション。新入生に向けて体育館で行われた。

 俺達は前もって全部活の紹介が載っている冊子を渡されていて、それを見ながらステージ上の先輩達の話を聞いていた。

 野球部の部長も副部長も俺の知っている人で、思わずにやついてしまった。後で挨拶に行こうっと。

 噂の通り、水泳部は無くなっていて、樹深はあからさまにがっかりしてた。

「どうすんの、お前」

 こっそり耳打ちすると、

「んー…何個か気になるのがあるから、その辺見学してみようかな」

「え、どれどれ」

「内緒(笑)」

 なんて樹深は答えた。

 そういやアイツは、と後方を見る。

 柏木、あんまり真剣に聞いてないように見えた。部活に入らないなんて、マジなんだろうか。

 プレゼンが全て終了して一旦教室に戻って、帰りの会をして解散となった。

 いよいよ仮入部開始。野球部を体験したい新入生はジャージに着替えてグラウンドまで、なんて言ってたので、いそいそと着替える俺。

 その時に、教壇の所で土浦先生と柏木が話しているのを見たというか…ちょっとだけ聞こえた。

「先生、私、やっぱり部活は…」

「どうしても…か? 一度、お父さんとよく話して…毎日拘束…ばかりでもない…色々…ほうが…」

 あんまり深刻そうに話すので、聞き耳立てるのも悪いと思って、俺はさっさと教室を出た。



 アイツ、ほんとに部活する気無いんだ。マジか。





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