はるみちゃんとぼく

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「そういえば、ホームなのに三塁側って珍しいですよね」

「規定は特に無いらしいですよ、今回は王者に御足労して頂いてるから、こちらなりの歓迎表明なんですかねえ」

 お父さん達が談議を──うちのお父さんは春海ちゃんのお父さんにすっかり心を許した、間違いなく──している傍らで、僕達も子供同士で話をする。

「たつみー、学校どう? 同じ幼稚園だったやつってあんまいなくね?」

 おれんとこなんてひっとりもいないんだぜ、そうは言うけど春海ちゃんという人は新境地でも平気。算数をスラスラ解くみたいに、ひょいと人の垣根を越える。

 僕ともそうだった。園庭で誰とも混じらずひとり砂遊びをしていた僕に春海ちゃんが話しかけてきたのが、僕達の交友のはじまり。

 僕達は同じクラスになった事はなかったんだけど、クラス保育以外でということであれば、毎日顔を合わせ、毎日園庭で遊び、雨等でそれが叶わなければ、廊下ですれ違いざまに「よう」「うん」の挨拶だけでも、僕達の関係は成り立っていた。

 園の初めての保育参観で親達がこぞって来園した時があって、放課後の園庭開放で春海ちゃんと遊んでいた際にそれぞれの母親に互いを紹介したんだけど、

「えっ! 淑子ちゃん!?」
「えっ! カエちゃん!?」

 同時に叫ばれて僕達が目を丸くしたのはもちろん、周りの人達もひとざわめきした。

 ふたりは同郷で、同じ高校で、就職で散り散りに離れてそれっきりだったそうで、実に15年以上振りの再会だった。

「この町に住んでるんだったら早く言って!」

 お母さん達は大笑いして肩を叩き合って──柳内家と後藤家の密な関わりもここからだった。

「春海ちゃん、うちの樹深を見つけてくれてありがとうね」

 実は春海ちゃん呼びはうちのお母さん発で、僕はそれまで春海ちゃんの事をねえとかあのさあでしか呼んだ事がなかったので、これに便乗して僕も春海ちゃんと呼ぶようになる。

 春海ちゃんは最初は苦笑いをしていたけれど、

「たつみがおれを名前で呼んでくれるようになったから、いっか」

 カラカラと笑った。

 お姉ちゃんだけが最初から君付け、今も続いているけれど、お姉ちゃんに呼ばれた春海ちゃんはいつもニコニコして嬉しそう。

 やっぱりちゃんは嫌なのかなと思いつつも、今更変えられないやと、僕は開き直る。





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