はるみちゃんとぼく

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「あずさねーちゃん、なんでかくれてんの? へんなのー」

 お父さんの背後を覗き込んだ春海ちゃんが、不思議そうに聞きながらお姉ちゃんの手を引くと、お姉ちゃんは観念したように前に出てきた。

「あずちゃん男ばっかりでつまんないかな、ごめんね」

 両手を膝に置いて少しかがんで、春海ちゃんのお父さんは言った。

 その言葉にお姉ちゃんは激しく首を横に振って、「そんな事ない」また小さな声で返事をする。

 春海ちゃんのお父さんがいるからお姉ちゃんは来たんだよ、言おうと思った矢先に、お父さんに後ろからそっと口を覆われた。

「お姉ちゃんの名誉の為にそれはナイショな(笑)」

 僕の耳元でそう囁いた後、ほら梓、樹深と春海ちゃんの手しっかり繋いでて、僕の手をお姉ちゃんの前に差し出した。

 はぁい、渋々答えた割には掴んだ手は優しい。

「とうちゃんー、おれはらへったよー」

 春海ちゃんがお姉ちゃんの手をブランブラン揺らしながら言う、お姉ちゃんは「春海くん、くすぐったいって」悪い気はしなさそうに笑った。

「よしよし春海ちゃん、おじさんちゃんと考えてきてるから。
 席に着く前にお弁当買っちゃいましょう。それから、僕らなーんも持ってきてないんで…メガホンとか買ったらよさそうですよね」

 お父さんの提案に、春海ちゃんのお父さんが楽しそうに頷いた。

 大人なのに子供みたい、ぼんやりとそう思っていると、急に腕を引っ張られてまた転びそうになった。

「ほら行くって。ちゃんと前見て、手ぇ離したら駄目よ。春海くんもね。こんなに人が多いんじゃ、すぐ迷子になっちゃう」

 お姉ちゃんの早口に、はぁい、わかった、僕達はそれぞれ答えた。

 お父さんふたりがチラチラと振り返りながらゆっくり歩くから、お姉ちゃんが心配するような事は無いんじゃないかな、と僕は思った。

「いやあ、子供たちから絶対目を離すなって、お姉ちゃんがしっかりしてるからってそれに甘えるなって、口を酸っぱくして言われてるもんで(苦笑)」

「あは、耳が痛い(笑) うちもおんなじ事言われてます。女性陣は抜かりがないですね(笑)」

 ほら、お母さん達が先手を打ってくれてたみたいだし(笑)





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