悠の詩〈第3章〉

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「とうちゃん、とうちゃんが来てたの、俺見えてたよ」

「そうなのか? それは気付かなかったなぁ」

「びっくりしたよ、土曜出勤って言ってたのにさぁ」

「(笑)(笑)」

 俺達の演奏が始まるまでの、生徒会の演劇も録音したままで、その間にコタ先生ととうちゃんの会話がちょいちょい挟まれていて…それを聞いた俺はようやく合点がいった。

 二日目の展示の時に、コタ先生がかあちゃんに内緒でとうちゃんに話し掛けて、もしよかったら明日、こっそり観に来ませんかと誘った事。

 振替で出勤しなきゃならないけど、その前に行こうかな、ととうちゃんが返事した事。

 アイツら、本当に沢山練習したんです、僕の身勝手な提案によくついてきてくれて、お父さんの理解もあったと聞いてます、とコタ先生が言った事。

 いえいえ、先生のご指導の賜物です。僕、春海からバンドやるって聞いた時、おーって、ちょっと興奮しちゃって。僕もちょっと、やってたから、ととうちゃんが言った事。

 へえぇそうなんですか、あ、そういえばアイツ、○△○町に連れてった時、お父さんと映画観に来たって言ってました。あ、これヒミツなのかな、まあいいか、ちょうど先週ね、後藤も一緒に楽器やらせに行ってたんです、○△○町に。

 あぁ、あれかな、タツくんと図書館に勉強に行って、先生にバッタリ会ってごはん奢って貰ったって(笑)

 はっは、そんな言い訳したんですか(笑) アイツ、照井のカレーめっちゃ気に入ってたなぁ。あ、照井って僕の友人で、スタジオ貸してくれたヤツで。

 うん? あれ? 照井…って、もしかして、照井レコードですか? ○△○町の照井レコード。

 あれっご存知です? もうレコード屋じゃなくて喫茶店なんですけど。

 ふふ、懐かしいなあ。学生時代よく買いに行ってました。

 えーっそうなんですか。じゃあ僕らもしかしたら、すれ違ってたかもしれませんね(笑) あ、もうすぐ出番ですよ──

 そこで会話は終わって、会場のどよめきが流れる。その間に、

「春海、とうさんもその照井カレー食べたいなぁ。今度ふたりで行こうか」

「えっまじで? かあちゃん抜き?」

「うん。男達のヒミツ(笑)」

「やったぁ、めっちゃ美味いよ照井カレー。照井さんもすごいいいヒトでさぁ。
 つーか俺、とうちゃんの過去にびっくりしてんだけど(笑)」

「(笑)(笑)」

 そこまで話して、書記先輩の【今から一曲始まります】の掛け声まで来て、

「春海、いいね、青春だね。よかったよ。すごく。さあ、聴こうか」

 とうちゃんにしみじみそう言われて、俺は照れながら、とうちゃんと一緒に演奏に耳を傾けたのだった。





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