悠の詩〈第3章〉

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 俺達に浴びせるスポットライトが眩しく、そしてじりじりと熱い。

 目を細めた先に、ギターを構える柏木と樹深の背中。

 こんな直前になって、俺は走馬灯の様に、これまでの──この三人が組んでから、今この瞬間までの──事を思い返した。

 楽しかったな。もう終わっちゃうんだな。

 柄にもなく感傷にふけってしまいそうになったが、ちゃんと締めなくっちゃな、うっしと声に出さず気合いを入れる。

 俺のそんな仕草に、樹深と柏木は肩越しに振り返りながらクスッと震えて、(いつでもどーぞ)の視線を送った。

 さぁ、始まりを告げよう。

 カン(ワン)、カン(ツー)、カン(スリー)、カン(フォー)、俺のスティックがのんびりリズムを刻むと、ふたつのギターがなめらかに撫でられ、音を鳴らした。

 前奏だけではやっぱり誰も分からないみたいだった。柏木がAメロを奏でだすと、おお、と観客ギャラリーから溜め息が出た。

 柏木の力強い旋律を、樹深のストロークが追いかける。それに寄り添うように俺の刻む音も共にいく。

 多分、結局、俺と樹深は柏木の腕に追いつけなかった。

 柏木が俺達に合わせている、でもそれは決してレベルが下がったとかの嫌味ではなくて、これが俺達三人の音のまとまり方なんだと思う。

 聴いてる方はどうだか知らないが、こっちはこんなにも気分がいい。俺だけかな? いやふたりもそうだ、俺と目が合う度穏やかな視線をくれるんだから。

 サビに差し掛かって、音が盛り上がるこの瞬間が大好きだ。

 初めて柏木と先生のを聴いた時に感じたあのゾクゾクを、ここにいる皆に届けとばかりに気持ちを込めてリズムを刻む。

 曲の途中なのに、わあっ、と歓声が上がって、拍手と、手拍子と、歌も少しばかり、俺達の演奏についてきた。

(──つばさはためかせ、ゆきたい)

 歌い終わりを迎えた所で、俺達はお互いを見た。終焉への合図。

 盛り上がりの熱をそっと引いて、徐々に、車のブレーキを掛けるようにゆっくり音を奏でる。

 自然と観客ギャラリー側がしぃんとなって、柏木のギターと、樹深のギターと、俺のドラム、この三つの音だけがステージのマイクを通って体育館に反響した。

 最後の最後、ふたつのギターが撫でられた音とシンバルのシャランという音が重なったのは、なんだか流れ星みたいだった。





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