悠の詩〈第1章〉

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「多分うちのお兄ちゃんのクラスの人…見世物じゃないのに。きょうだいが同じ学校ってほんとイヤ」

 溜め息をつきながら、由野は廊下へ出ていった。

 それとすれ違いに、樹深が自分の席を立って俺達の席にやって来た。

「おはよ。俺もこっちに混ぜて」

「なんで。向こうの席の連中と仲良くやってんだろ?」

 樹深は教室にいる時は極力俺に近づかないようにしていた、というのは、うっかり春海ちゃん呼びをしてしまいそうだから、なんていう気遣いからなんだけど。

 そう言ってたヤツが何でよ。樹深の意図もよくわからん。

「もちろんだけど。
 でも、姉ちゃんの後輩ってのがね…ちょいちょい来るんです。
 ドアのすぐそばだから、油断するとすぐ捕まっちゃうんだよね」

 由野が出ていったドアを見ると、また別の3年生の女子達がキョロキョロと教室の中を見回して、すぐにいなくなった。

 はー、と由野と同じ様な溜め息を樹深がついた所で、由野が戻ってきた。

「お疲れ。きょうだい持ちはツラいよね」

 樹深の労いの言葉が嬉しかったのか、むー、と眉間にしわを寄せてたのをぱっと解いた由野は、

「ほんとほんと。めんどくさいったらないよー(笑)」

 いつもの明るさでこぼした。





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