悠の詩〈第3章〉

13/66

前へ 次へ


 盛り沢山な週末を経て、月曜日を迎えた。文化祭初日まであと3日、演奏本番まであと5日。

 この日から準備強化週間となる。授業は午前中だけになって、お昼以降全クラス、準備の時間に充てられる。

 気合いの入っているクラスだと、弁当の時間から始めてる所もあるらしい。うちのクラスはまぁ、そこまでじゃない。

 俺と樹深と柏木はこれまでと変わらず、弁当を食べ終えてすぐに音楽準備室に向かう。

「おっ来たな。さぁさぁ、どんどんやっていこう。柳内、後藤、土曜の成果見せてくれ」

 コタ先生は逸るように促した。先生の言葉に「土曜?」柏木が首を傾げると、「おっと」わざとらしく視線を反らして、でも顔はにやついてた。男たちのヒミツじゃなかったんかよ(呆)

「まぁいいけど。やるよ、時間がない」

 柏木は特に気に留めるでもなく、ジャカジャンと一度強く弾いて、俺に目配せをした。そうだ、スタートさせるのは俺の役目。

 スティックを4回鳴らして、俺達は演奏を始めた。

 進めていく内に、土曜のスタジオでの感覚が蘇って、若干興奮状態。樹深もそうだろうか。

 演奏中数回、柏木が俺と樹深を不思議そうに見た。「へえぇ」音に掻き消されたが口の動きでそう言ったのが分かった。

 ふたりのギターを撫でる音と、俺のシンバルをそっと叩く音が重なって、演奏を締めるとコタ先生が惜しみない拍手を送った。

「よしよし、しっかりものにできてるじゃないか」

「なんだか知らないけども…秘密特訓でもしたのかい」

 俺達の上達ぶりにまんざらでもない様子の柏木。思わず男たちで顔を見合わせてニヤッとする。

「今の感じを忘れるな。
 そうだ、ステージでの詳細、生徒会の方で粗方決まったんだ。お前達の立ち位置もここでイメージしておこう。
 今度の金曜、2日目終わった後で生徒会の奴らと軽くリハーサルするからな」

 そう言ってコタ先生は、準備室を体育館のステージに見立てて俺達を立ち位置に誘導させて、その形で練習を続けさせた。

 何回か通しをする内にキーンコーンカンコーン、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

 それと同時に柏木が、はたとつぶやいた。

「あ、そうだ…伝えておかなきゃいけない事が。
 申し訳ないんだけど…
 今日から今週いっぱい、私、放課後残れないから」





13/66ページ
スキ