悠の詩〈第3章〉
8/66
「あーそうだ、いっこ謝んなきゃ。明日も使っていいって言ったけど、ダメになっちゃった。
知り合いのアマチュアの子達がここ使いたいって。デモテープ録ってセールスするってはりきっててさ…
沢山練習させてあげたいんだけど…ごめんね~」
俺達のおかわりの様子を眺めながら、照井さんは申し訳なさそうに言った。
「あーそうなのか? そりゃ仕方ないな、そっち優先だな。
お前達、そういうわけだから…すまんな。明日はそれぞれ自主練してくれ。
次に思いきり音出せるのは…文化祭前のリハーサル一度きりだなぁ」
コタ先生まで謝罪を入れるので、俺達は、そんな、大丈夫ですから、と縮こまった。
「春海ちゃん、よかったら明日、俺ん家で練習しない? 朝から誰もいないからさ…あ、イッサはいるけど(笑)」
「おーいいのか? じゃあそうするかな。イッサの散歩にも付き合ってやるぞ?(笑)」
「(笑)(笑)」
俺達のやりとりに照井さんはクスクスと笑って、「君達仲良いね」と言いながら食べ終えた食器を片付けだした。
「さぁすっかり休んだな、練習を再開しよう。お前達、何時まで平気だ?」
席を立ってギターの所へ向かいながらコタ先生が言う。
「先生、今日俺達図書館で勉強って事になってんだよ。
樹深はともかく、俺がずっと勉強なんてありえねーって、特にかあちゃんには信用ないからさぁ(苦笑)
17時までに家に着いてた方が無難かなぁ…」
真面目に話してるのに、先生と照井さんは大笑い。樹深まで一緒になって腹抱えてら。
「わかったわかった、じゃあ16時半になったらここを出よう。タクシーで家まで送ってってやる。
それなら2時間くらい思いきりやれるよな」
コタ先生の贅沢な提案に恐縮するより先に、「「お願いします!」」と叫んだ俺と樹深(笑)
そこからみっちり練習、練習、練習。合わせをずっと繰り返した。
何回もつまずいたけど、後になるにつれ、ミスなく最後まで演れるようになってきた。
次の学校での練習の時、柏木のやつビックリするかな、俺達の上達ぶりに。
(まだまだ。もっと巧くなきゃ困る)
柏木のパートをコタ先生が代わりに弾いているのだが、その旋律に乗って柏木が言いそうなその言葉を聞いた気がする俺は、きっとすごく疲れてるんだろう(苦笑)
…