悠の詩〈第3章〉

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「お前達…って、俺と樹深のふたり? 土日両方?」

「そう」

「柏木さんは?」

「柏木は…うん、習い事で缶詰めになるから言ってない。
 まぁアレだ、男同士のヒミツって事で(笑)」

 コタ先生がいたずらっぽく笑いながら話すのを、俺は樹深と顔を見合わせながら聞いた。

「春海ちゃんはどう? 俺はどっちも平気だけど」

「俺は…明日は野球部の朝練があるからその後なら。
 日曜は…部活は休みだけど、家族で過ごすって決まってるからなぁ…無理かなぁ」

「あ、でも、日曜ってうちの母さんと春海ちゃんのお母さん出掛ける約束してなかった? なら大丈夫と思うけど」

 おいまじか。その話全然聞いてねぇし(苦笑)

 帰ったらかあちゃんに確認しとこう。となると日曜はとうちゃんとふたりきり、でもとうちゃんは事情を知ってるから、話せば行かせてくれるはず。

「そうかそうか。じゃあとりあえず明日は行けるって事で。
 そしたら、ふたりとも13:00に○○○駅改札な。
 車停められない場所だから、電車で行くから。交通費、先生が出すから心配しなくていいぞ。
 楽譜だけ忘れずに持ってこいな」

 先生はお馴染みのニカリン笑顔をして、俺達を昇降口まで送り出した。





「思いきり練習できる場所ー、だって。どこなんだろうな?」

 帰り道で樹深と歩きながら話す。

「さあねぇ。
 でもさ、休みの日に先生と出掛けるなんて…
 なんかワルイコトするみたい(笑)」

「なんじゃそりゃ」

「非日常っていうか。ぞくぞくするね(笑)」

「オマエ…言葉のチョイスがオカシイ。なんだよぞくぞくって(苦笑)」

「なんでよ、そこは分かってよ、長い付き合いなんだからさぁ(笑)」

「ばぁかー。フワフワしやがって」

 俺とのやりとりにヘラヘラの樹深は、別れ道になると急にシャキッとして「じゃあ明日駅でね」颯爽と駆けて夕闇に溶けていった。

 アイツ、練習の帰りいつもそう。家でも早くギターに触らないとムズムズするんだと(笑)

 はじめ家では練習出来そうにないと言っていたが、静かに鳴らす分には誰も気にしないようで、学校でやったおさらいを短い時間でもやってるということだった。

 とはいえ、思いきり音出したいだろうな。俺だってそうだ。

 だから、明日の先生とのヒミツの外出が楽しみで仕方がなかった。





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