悠の詩〈第2章〉

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「よしよし、やっぱりお前達は仲良しだな(笑)
 さ、全員揃ったんだから練習をおっ始めよう、あんまり時間ないけど。
 柳内はまずリズムを叩き込まないと、しばらく先生が付きっきりになるからな。
 後藤は、柳内が形になるまでは、柏木に教わりながら練習してくれ。柏木いいな? 頼むぞ」

 コタ先生がシャキシャキ指示を出すと、俺達はその通りに分かれて動き出した。

 柏木、自分の練習をしたいのにって食って掛かるかと思ったけど、

「Cコード難しいな…指が…つりそうなんですけど(笑)」

「がんばれがんばれ、それが出来なきゃ曲が始まれないよ(笑)」

 苦戦する樹深のすぐ横で、控えめに自分のパートをつま弾きながら見守ってるつもりの様、まぁ、アイツが樹深に尖れないのは知ってる。

「さぁ柳内、家で少しは叩けたか? よっこらせっと」

「うーん叩いたっちゃ叩いたんだけど…って、うわ、先生、何ソレ」

 コタ先生のじじくさい掛け声と共に現れたモノに、俺は目が釘付けになった。

 電子ドラムの本体だ。

「はっは、初めて見るか? 本当は生ドラム叩かせてやりたいけどなぁ…中学校の音楽室じゃ無理だわな。
 そんじゃとりあえず、はじめの4小節だけのリズムを…
 使うのはこれとこれとこれ、みっつだけ。番号シール貼っといてやるな。ほれ、楽譜の方にも番号ふってあるだろ。
 まず先生が叩くから…聴いててくれ」

 そう言って、カンカンカンカン、コタ先生はスティックを4回カチ鳴らしてから演奏を始めた。

「ちょっ、先生、足も使うなんて俺聞いてねぇしっ」

「そうだったか?(笑) まぁなんとかなるだろ、タン、タタン、な」

 俺と対話しながら先生は器用にドラムを鳴らす。

 最初の4小節をずっと繰り返すので、先生に合わせて自分もエアドラムしてみるけど、手と足で全然違うリズムを刻むから、体全体が拒否反応を起こしてむず痒くなる。

 しばらくして先生と交代、初めて電子ドラムを叩いた。そっと叩いただけでも音が大きく出て、振動も伝わった。

 「ちょっとそれがデメリットなんだよなぁ、抑揚の表現が…」なんて先生はつぶやいたけど、ドラムに触れて勝手に大人になったような気がする俺にはどうでもよかった。

 「春海ちゃん、ちょっとかっこいいよ(笑)」という樹深の含み笑いにも気をよくした(笑)





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