悠の詩〈第2章〉
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翌日の昼休みから、俺達3人の音楽準備室での練習が始まった。
行くタイミングはてんでバラバラ、というのは、3人いっぺんに姿を消したら怪しまれるだろうという柏木の懸念から。
何もそこまでと思ったけど、確かに、特に由野が、昼休みに一緒にいられない寂しさからなのか、休み時間とか柏木にベッタリだった(苦笑)
バラバラに向かう話も直接3人で話し合ったわけじゃない、柏木が勝手に発起して樹深に話して、樹深から俺に伝わるっていう…なんだこの後回し感(呆)
まぁ、そうする方が、俺がやいのやいの言うのを省けるし、今樹深と柏木は隣同士だし、由野や丸山にも違和感は伝わらない、スムーズに事が運ぶからだと合点は行くけども。
(伝えといたよ~)
(そ、ありがと)
俺への伝言を終えて席に戻っていく樹深を目で追うと、そんなやりとりが目に入って、アイツらの連携感に腹が立った。
樹深をいいように伝言板代わりに使う柏木、いいように使われてホイホイ従う樹深、どっちも。
けっと思わず漏らしてしまって、
「春海くん? どうしたの? 悪態なんてついて?」
トイレに立っていた由野がそう笑って戻ってきたので、慌てて「なんでもね」と誤魔化した。
ドラムのリズムを早くコタ先生から教わりたくて、弁当を速攻で掻き込んで、昼休み終了のチャイムが鳴る前に「あートイレ行ってこよ」と教室を出た。
よっしゃ一番乗り、揚々と準備室のドアノブに手を掛ける直前、楽譜を持ってきていない事に気付いてすぐに取りに戻ったところを、昼バレー組の松谷達に捕まりそうになった。
「柳内最近付き合い悪っ」
「わりー、また今度! 先生に用あってさぁ」
さりげなくかわしているつもりだけど、文化祭終わるまでこれが続くのか、少し胸の奥がちくんと痛くなりながら、今度こそ準備室のドアを開けた。
「おー柳内来たか? 遅かったなー」
俺に気付いてコタ先生が奥から声を掛けると、こちらに背中を向けていた樹深と柏木が振り返った。
「春海ちゃんどうした? 俺達より先に教室出てたのに(笑)」
一番乗り叶わず。がっくりと頭を垂れながら樹深のそれを聞いた。
ふたりは楽器を持っていなかった。てっきり先に始めていると思ったのに。
「一応待ってたよ、多分キミ、不貞腐れるかと思って(笑)」
時間がないと一番騒ぎそうな柏木が、例のニヒル笑いをしてそう言った。
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