悠の詩〈第2章〉

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「そうかそうか後藤、お前ならそう言ってくれると思ったぞ?」

 満足げに頷きながら熱い握手を求めるコタ先生の手を、樹深はニコニコ顔で取った。

 その光景を目の当たりにした俺と柏木は、数秒あっけにとられて動けなかったが、同時にパイプ椅子の背もたれにのけぞってヒソヒソと言い合いを始めた。

(後藤くん、こんなヒトだったの!?)

(さぁどうだろ、こんな一面は俺も初めて見た)

(あぁ…後藤くんは前に出る人じゃないと思ってたのに)

(そうだよなぁ、何か妙に積極的で珍し(笑))

(笑い事じゃないだろうよ、これでもう断れなくなった)

(そうだよなぁ、もうどうしようもないわな)

(はぁ、何でキミ、そんな呑気に構えてんの、2週間足らずでドラムやれって言われてるんだよ、経験ないんだろ、引き受ける気かよ、無茶苦茶過ぎるだろ)

 この辺りでもう、柏木はこめかみに手を添えてうなだれて、言葉尻が大分荒れていた(苦笑)

 柏木が憔悴したい気持ちも分かるけど、でも俺は。

(そうだけど。
 でもさ、オマエはもう問題ないんだろ、あとは俺達がいっぱい練習すりゃ、なんとかならないか?
 足引っ張らないように頑張るからさ。ここはちょっと、折れてくんねぇかな)

 滅多に見ない自己主張をした樹深を応援したい気持ち6割、自分も挑戦してみたい気持ち3割、思い通りにならず焦る柏木が(言ったら怒られそうだが)ちょっと面白い気持ち1割。

 そんなのを込めて柏木に投げ掛けたのと、

「お前達は仲良しだから。何とかなる。もちろん先生も精一杯サポートするから、そんなに心配するな」

 とコタ先生がゆるくこの案件をまとめようとするのが同時で。

 その直後に樹深がぺろっと舌を出して(お願いします)と一応申し訳なさそうに俺と柏木にジェスチャーをしたもんだから。

 とうとう柏木は反逆の意志を手放して、

「わかった、わかりましたよ、やりゃあいいんでしょ、あぁもうっ」

 これを最後の吐き捨てとした。



 自己主張を押し通した樹深に柏木は違和感しかないみたいだけど、案外樹深の地はこんなもんかもしれない。

 楽しそうな事には目がないもんな、アイツ(笑)





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