悠の詩〈第2章〉

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 わざとらしく語尾を細かく刻んで言うコタ先生に、柏木は心底呆れたようで、額を押さえてうなだれた。「うそでしょ…」とさえ漏らしている。

 俺と樹深はというと、ここまでの流れを、こうなった経緯を、ぽっかーんとしたカオで見ていた。

 オレタチサンニンデ、バンド? ナニイッチャッテンノ??

「そもそも時間が全くない、2週間足らずで一体どうしろと?」

「いやー何とかなるだろ、翼を下さいは元々初心者向けだし。
 明日から文化祭迎えるまで、昼休みと放課後の空き時間にみっちり教え込んでやるからさ…
 後藤は家にギターあるって、コードさえマスターして貰えりゃ、柏木のメインの旋律に合わせられるだろ。
 柳内には、ほらこれ、先生が昔使ってた電子ドラムの練習用パッド貸してやるから。家でいっぱい練習してくれ」

 さっきこれを取りに行ってたんだと言って、コタ先生はそのパッド一式を俺に渡してきた。

 手書きの楽譜も一緒に、これは樹深にも配られた。

 ちょい待てちょい待て。そんなにこやかに話を進められても。

 たしかにちょっとは面白そうとは思うけど…本気かコタ先生?

「勘弁して下さい、こんなのおかしい、やるなんて一言も言ってない」

 苦々しく柏木が最後の抵抗をする、珍しく俺と意見が一致したけれど…

 こいつの、このひとことで、何もかもが決定してしまったのだった。





「先生、俺、やってみたい」





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