悠の詩〈第2章〉
69/80ページ
そして放課後になって、文化祭準備の時間。
皆が皆最後までいるワケじゃない、1時間経つ頃には半数ほど抜けていく。
樹深たちのように部の展示準備へ行くのもあるし、大会が近くて練習に行ってしまう運動部の奴らもいたし、塾だのに忙しい奴もいた。
最終下校は全て(準備作業も部活動も)17時半と定められていて、17時になると先生からの追い出し宣告が始まる。
「おぉーい、17時回ったぞー、帰る支度しろよー」
「はあーーい」
不思議とこれに逆らうやつはいない(笑) キビキビと片付けて、次々と昇降口から出ていく。
俺もいつもならその中に紛れるんだけど、昼間言われた通り音楽準備室へ向かった。
「あ、春海ちゃん来た」
ノックして扉を開けると、樹深と柏木が既に来ていた。
「あれ、お前らもう来てた? 遅くなるかもとか言ってたのに」
「うん。学校で出来る事は済んじゃったから、今日は早めに切り上げたんだよ。
文化祭までの集まりもあと2回ぐらいで足りちゃうらしいよ。ね、柏木さん」
樹深が振ると、柏木は澄ました顔でうんと頷いた。
「で、先生は? 何で呼んだ本人がいねぇんだよ」
コタ先生の姿がなくて、俺は苦笑いをする。
「さっき出ていったよ、すぐ戻るからって言って。
…早くしてくれないかなぁ、すぐ帰りたいのに」
腕を組んで暮れていく窓の外を見ながらそう言う柏木、ピリピリと突き刺すのはやめてほしい(苦笑)
とそこへ、コタ先生が戻ってきた。
「おっ揃ったな? 3人とも準備作業お疲れさん」
「先生、早く用件言って下さい」
被せるように訴えた柏木を、まあまあと先生はなだめた。
「すぐに済むかはお前達次第なんだけどな…先生が考えた事、ちょっと聞いて貰ってもいいか」
穏やかな顔で言いながらパイプ椅子に座るコタ先生に、俺達の視線が集まった。
何だろう?
それは
ぶっ飛んだ提案だった。
「お前達3人でバンド組もうかと思うんだけど」
…