悠の詩〈第2章〉

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 今ここで話したら、丸山と由野が「何の話?」って割って入ってくるだろうし、そしたら全部説明しなきゃならないし、そもそも内密の話だし、何より柏木の突き刺す視線をまた浴びる羽目になるし(苦笑)

「──という手順で、はい、各班早速道具の準備をして下さい」

 そうこうする内に理科室内が実験準備の喧騒に包まれた。

 手分けして道具を棚から出したり、先生から材料を受け取ったり。その最中で樹深と柏木がちょうど同じ道具を取りにいってて、その様子がたまたま視界に入った。

「あぁ柏木さん、さっきはおじゃましました。
 あのさ、放課後、天文部の準備の後ででいいんだけどさ、また音楽準備室に来てくれって土浦先生が。
 あ、俺と春海ちゃんも一緒にってさ」

「…えぇ? 何でそんな事になってんの? だいたい、もう来ないでって言ったばかりでしょうが」

「さぁ。俺達もよく分かんないけど。とにかく伝えたから。よろしくね」

「……」

 伝え終わってスッキリした様子の樹深の背中を、柏木は恨めしげに見ていた。

 そして、席に戻ってきて俺を見るなり眉間にしわを寄せたけど、

「なんか変なことになってるみたいだけど…分かったよ、帰る前ね。しょうがないな」

 コタ先生の伝言をすんなり受け止めたみたい。

 樹深から言ってくれてよかった、俺からだったら十中八九コイツ帰ってる(苦笑)





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