悠の詩〈第2章〉
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「ふーん。で、お前も弾いてみちゃうワケ?」
「まさか。俺弾き方知らないもん(笑)」
「なんだよ、そこはやるって言っとけよ。弾けたらいいな~なんて言ったクセに(笑)」
「あっはは。そこは忘れましょうよ(笑)」
俺と樹深のこのやりとりを、コタ先生はまた顎に手を宛ててじっと見ていた。
何か考え込んでいるように見えたが、「先生? ナニ?」と俺が小首をかしげると、「あー」と一瞬間遠くへ目をやった。
そして、再び俺達に視線を戻して、
「なぁお前達。今日、放課後の展示準備終わって下校するまでの間、ここにまた来れるか?」
覗き込むように近づいてきたので、俺達は思わず少し後ずさった。
「え、と、俺は別に大丈夫だけど…樹深は?」
「俺は、途中で天文部の方へ行くから、その後でいいなら。ちょっと遅くなるかもしれないけど」
顔を見合わせながらそう答えると、先生はニーッと笑って、
「そうか。じゃあ待ってるからな。
柏木も一緒に来るように、柏木に伝えといてくれ」
そう言い終わらない内に5時間目開始のチャイムが鳴っちゃって、「やっべぇ、遅刻だ遅刻」と言いながらコタ先生は職員室の方へ走っていった。
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