悠の詩〈第2章〉

66/80ページ

前へ 次へ


「ふーん。で、お前も弾いてみちゃうワケ?」

「まさか。俺弾き方知らないもん(笑)」

「なんだよ、そこはやるって言っとけよ。弾けたらいいな~なんて言ったクセに(笑)」

「あっはは。そこは忘れましょうよ(笑)」

 俺と樹深のこのやりとりを、コタ先生はまた顎に手を宛ててじっと見ていた。

 何か考え込んでいるように見えたが、「先生? ナニ?」と俺が小首をかしげると、「あー」と一瞬間遠くへ目をやった。

 そして、再び俺達に視線を戻して、

「なぁお前達。今日、放課後の展示準備終わって下校するまでの間、ここにまた来れるか?」

 覗き込むように近づいてきたので、俺達は思わず少し後ずさった。

「え、と、俺は別に大丈夫だけど…樹深は?」

「俺は、途中で天文部の方へ行くから、その後でいいなら。ちょっと遅くなるかもしれないけど」

 顔を見合わせながらそう答えると、先生はニーッと笑って、

「そうか。じゃあ待ってるからな。
 柏木も一緒に来るように、柏木に伝えといてくれ」

 そう言い終わらない内に5時間目開始のチャイムが鳴っちゃって、「やっべぇ、遅刻だ遅刻」と言いながらコタ先生は職員室の方へ走っていった。





66/80ページ
スキ