悠の詩〈第2章〉
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そうしている内に、キーンコーンカンコーン、昼休み終了のチャイムが鳴った。
「時間になっちゃったな。さぁ行った行った、5時間目が始まるぞ。
また来てくれてもいいぞ、その代わり、ここでの事は誰にも言わないでくれな」
俺達を立たせてパイプ椅子をサッと片したコタ先生は、柏木と反対の事を言いながら俺達の背中を押した。
「え? いいの? アイツ、来んなって言ったのに」
「ギャラリーいた方がいいんだって、驚くほど上達が早くなるんだぞ。
それに、あれは柏木の本心じゃないと思うぞ?」
先生はのんきに言ったけど、そりゃナイわ、と俺は思った。アイツのぶっ刺しそうな視線が、コタ先生の目には写らないんだろうか(苦笑)
「だったらまた明日来ようかなぁ」
柏木の鋭さに動じない大物がここにもいた(笑) 先生の言葉を受けて樹深がニコニコする。
「おっ後藤、ギターに興味あるか?」
「はい。俺もあんな風に弾けたらいいな~」
そうなの? 樹深にそんな願望があるとは知らなんだ。
「俺んちにね、親が若い頃使ってたギターが一本あるんだけどね。
小さい時に聴かせてくれた事もあったんだけど…もうずっと誰も触ってないし、どこにしまってあるかも分かんない。
探してみようかなぁ、先生と柏木さんのを聴いてたら久々に見たくなった」
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