悠の詩〈第2章〉

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「え? コ、土浦先生が?」

 てことは、この扉の向こうには柏木とコタ先生がいるってこと? ふたりで何してんだろう。

 思い当たる事が何もなくてうーんと頭を捻っているそばから、樹深が扉をノックしようとした。

「わ、ちょっとまて」

「え、なぜに?」

 俺に急に手を掴まれて樹深がきょとんとする。

 この場を去った方がいい気がするのだが、それだと樹深が用事を済ませられないし、どうしたもんか。

(………あれ?)

 扉の向こうから。

 樹深も気付いたみたいで、俺の顔を見ながら、さっきの俺みたいに扉に耳を宛がった。

 俺も樹深の横で再度耳を寄せる。

 それは

 ギターの旋律だった。


「…【翼を下さい】、かな? これ」

「え、そうか? メロディー全然違うじゃんか」

 忙しそうにギターの弦をつま弾いているらしい、ポロポロと奏でられるギターの音。知ってるメロディーなんか全然出てこないのだが、

「でも、ほら」

 ドアに片耳をつけたまま樹深がフンフンフーンと鼻歌で一節を奏でてみせると、見事にそのギターの旋律に乗った。

「うお、マジだ!」

 なんかヘンに感動しちゃって、不意に大きな声を出してしまって、さらにガタン、ドアを揺さぶってしまった。

 ピタ、とギターの音が止む。

 うわやばい、そう思ったのと、その場を去ろうと動き出したのが同時だった。樹深もそう。

 でもそれらより先に、準備室のドアが開いた。





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